アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~

 一見平和なこのシュサイラスア大国及び、リノ・フェンティスタ。しかし何者かが水面下で緻密な計画を練り、よからぬ事を起こそうとしているのではないかと。ライオネルは他国と連携を取りながらも、この不安が杞憂である事を願っていた。

 だが、現に国内で誘拐事件が連続して起きた。その手口や手法はあからさまに内乱時の王族拉致のそれとよく似ている。
 そして、今回連続で起きた誘拐事件の本当の狙い。それこそがこの国で一番の人気を誇る酒場(バル)
 ー BAR・Fruto del amor (バル・愛の果実) ー の看板娘であり、ラインアーサの想い人 スズラン だったのだ。

 何故スズランが狙われるのか。その理由については酒場(バル)のマスターであるユージーンが重い口を開くべく立ち上がった。
 彼は皆の前で静かに息を吸い、確かな声で言った。

「……ひとつ、伝えなければならないことがあります。スズの本当の父親は──自らの命を削ってまで娘を愛していた小フリュイ公国の大公、アスセナス公でございます」

 ユージーンは震える手で懐から手紙を取り出した。

「これは内乱後、ずいぶん経ってからに私の元に届いたものです。けれど……スズが幸せでいることを願って、私は今日まで隠し続けてしまった」