会議の間の壁に掲げられているシュサイラスア大国の国章──黎風輪章(ライフウリンショウ)が描かれた深紅の布は、朝の光を受けてわずかに揺れている。その色は場に強さを与えつつ、この部屋に集まっている者たちの気配と不思議と調和していた。

 天井は高すぎず、照明の灯りは柔らかい。
 落ち着いた色調の絨毯が張られている床は何処か温もりを含んでいて、誰かが席を引く音さえ包み込む。

 庭園から差し込む光と影が風で揺れる度、場の緊張感が和らぐ様な気がした。


「──皆、よく来てくれた。本日の招集に応じてくれたこと、まずは王として礼を述べよう。そして……懐かしき友がこの場に加わってくれたこと、これほど嬉しいことはない」

 明るく良く通る声が会議の間に響く。「感謝する」と、朗らかに笑みを浮かべるライオネル。同時にユージーンの肩が小さく揺れる。

「さて、今日の議題は決して軽いものではない。我々がこの先どの道を選び、どう動くべきか。
 正解を独りで決めるつもりはない。その判断には皆の力が欠かせぬ。遠慮はいらない。この国の未来を共に形づくる為、ここにいる全員の知恵を……どうか力を貸してほしい」

 ライオネルがそう切り出す。一番初めに声をあげたのは───。

「あの。一つだけ良いっすか…?」

 顔の横に軽く手を挙げ、発言したのはセィシェルだ。