他の者たちが去り、会議の間の扉が閉まる。
広く感じていた議場が急に二人分の空間になる。
ライオネルは最奥の椅子に腰かけたまま、口を閉ざしている。この沈黙がハリには既に試練の様に思えた。
やがて、極限まで笑みを消した王が口を開く。
「──すまないね。一人残ってもらって」
「いえ」
極力感情を殺し短く答える。
「あまり畏まらず、楽にして欲しい。──さて、早速だがハリ君。これは王としてではなく、一人の年長者として君に問う」
一拍置くライオネル。
逃げ道を与えない、けれど威圧もしない声音。だがそれはこの空間が彼の物なのだと嫌でも理解できた。
固唾を呑み、ハリは静かに質問を待った。
「……もし、だ。封印されたジャコウ皇帝を解く〝鍵〟が君の手中に揃ったとしたら──君はそれを、解きたいかい? 彼は君の父だ。その血を引く者として……君自身は、どう望んでいる?」
既に確信を持って言い放たれた言葉に、すぐには答えられなかった。ハリの中で沈黙と葛藤が渦巻く。
頭の奥で父の声、冷たい視線。
期待されなかった日々。
そして──唯一、温度のあった記憶。万理の笑顔。
ハリは小さく息を吐き、逃げる為の言葉ではなく〝用意していた言葉〟を口にする。
「……解きたくありません」
はっきりと、揺るぎなく。
「!」
「私は……あの男を〝父〟だと思えた事が一度もありません」
少しだけ視線を伏せ、拳をそっと握る。
広く感じていた議場が急に二人分の空間になる。
ライオネルは最奥の椅子に腰かけたまま、口を閉ざしている。この沈黙がハリには既に試練の様に思えた。
やがて、極限まで笑みを消した王が口を開く。
「──すまないね。一人残ってもらって」
「いえ」
極力感情を殺し短く答える。
「あまり畏まらず、楽にして欲しい。──さて、早速だがハリ君。これは王としてではなく、一人の年長者として君に問う」
一拍置くライオネル。
逃げ道を与えない、けれど威圧もしない声音。だがそれはこの空間が彼の物なのだと嫌でも理解できた。
固唾を呑み、ハリは静かに質問を待った。
「……もし、だ。封印されたジャコウ皇帝を解く〝鍵〟が君の手中に揃ったとしたら──君はそれを、解きたいかい? 彼は君の父だ。その血を引く者として……君自身は、どう望んでいる?」
既に確信を持って言い放たれた言葉に、すぐには答えられなかった。ハリの中で沈黙と葛藤が渦巻く。
頭の奥で父の声、冷たい視線。
期待されなかった日々。
そして──唯一、温度のあった記憶。万理の笑顔。
ハリは小さく息を吐き、逃げる為の言葉ではなく〝用意していた言葉〟を口にする。
「……解きたくありません」
はっきりと、揺るぎなく。
「!」
「私は……あの男を〝父〟だと思えた事が一度もありません」
少しだけ視線を伏せ、拳をそっと握る。



