アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~

「……ったく。重たい話はここまで、だな。スズがちゃんと前向いてんの見りゃ、俺も文句言う筋合いねぇし」

 くいっと顎でスズランを見やる。そして視線を逸らしてから、ぽつりと。

「それに……今さら、放り出す気もないしな」

 軽く、確かに家族の距離を保とうとするセィシェル。最後に場を見回して。

「じゃあ、話の続きといこうぜ。今度はどう守るかじゃあなくて、どう生きるかの話だろ?」

 その一言で、場の空気が整う。
 一連の流れに微笑んでいたライオネルだが、ここに来てまた雰囲気を変える。

「私も、二人の意志を尊重したい。だが──現在の時点で二つほど問題が浮上している」

「父上。その問題っていうのは…」

 ラインアーサはスズランの掌を握ると静かに息を飲んだ。ライオネルの声色は穏やかだけれど逃げ道を作らない王の声だ。

「実はね……既に小フリュイ公国のアスセナス公へは、シュサイラスア大国として正式な書状を送ってあるんだ。使者からは「確かに公の元へ届けた」という報告も受けている」

 そこで一拍、僅かに言葉を切るライオネル。

「それでも……返書がない。閑却にされているとは思っていないよ。あの者は、そういう不義理をする人物ではない」

 アスセナスの人格を擁護し、状況のみで断定しない。そういったライオネルの配慮にユージーンも同意する様に頷く。王としての心配というより政治と父心の境界に立っている様にも感じ取れる。