アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~

 終焉ではなく〝静の檻〟──それが古来より伝わる、彼らの守りの形なのだろう。

「しかし、その封印には〝代償〟が伴った。儀を成立させるには、光を注ぐ者と、門を綴じる者が必要だったのだ。リリィオス妃は自らその役目を引き受け……たったひとりで、門の向こう側へと旅立たれた──。
内乱が終わったのは、彼女が世界のために支払った〝静かな犠牲〟の上にある。それを我々は決して忘れない、いや忘れてはならない」

 会議の間に重い緊張感が張り詰める。
 イリアーナが耐えきれずに口元を抑え心情を吐露する。

「……そんな、そんな犠牲の上に私たちは…っ」

「イリア様、無理をなされては……自室に戻られても」

「いいえ、目を背けてはいけないわ」

 体調を心配したリーナが駆け寄り、退室を促すがイリアーナはふるふると首を振る。
 内乱収束のこの事実だが、殆どの者には知らされていなかった。理由は一つの過失に起因する。

「……そして、もう一つ。この場で必ず伝えねばならない重大な事実がある」

 静かな声が会議の広間に吸い込まれていく。
 ライオネルは視線を皆に巡らせ、最後にそっとスズランへ目を落とす。その一瞬のためらいが、事の重さを語っていた。

「封印──ルゥアンダ帝国のジャコウ皇帝と、その側近サミュエルを閉じ込めた〝古き遺跡の枷〟だが、どんな手を使ったのかサミュエルはその枷をすり抜けたのだ。そしてあの封印には、一つだけ弱点がある」