アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~

「セィシェル、お前もそろそろ落ち着け」

「別に…! 俺は悔しくなんてないし! スズが笑顔でいられるなら……」

 言いながらもセィシェルは僅かに頬を紅潮させており、親子の掛け合いを目の当たりにした者達はそれを優しく黙認するのだった。
 会議の間は、あたたかな静寂に包まれる。
 落ち着きを取り戻したスズランだが、議題は更に深い所へと進む。

「──ですが〝封印を解く鍵〟というのが何の事なのか……ただスズにとって良くない事なのは分かってます」

「ここからは私が」

 ユージーンの発言に対し、ライオネルが立ち上がる。ライオネルは深い呼吸で間を置いた後、ゆっくりと話し始める。

「……かつてリノ・フェンティスタを揺るがしたあの内乱の事は、この場の誰もが身をもって知っているはずだ。
首謀者はルゥアンダ帝国のジャコウ皇帝、そしてその影で暗躍した男、サミュエル。彼らの思想や野心はこの世界そのものを歪めかねないものだった。
だが──内乱が鎮まったのは、我々の力だけではない。

煌都パルフェのガトーレ司祭、そして小フリュイ公国のリリィオス大公妃が手を携え、古き遺跡で〝封印〟の儀を成したからだ。
ジャコウとサミュエルはその地に縛られ、二度と世界に災いをもたらすことはできぬ」

「その封印ってまさか……」

 ラインアーサは言いかけたが、言葉を止めてライオネルの発言を待つ。
 リノの民は罪を斬ることより、闇を封じることを選ぶ種族である。