アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~

 ユージーンは意識の無い二人を何とかを自宅までかつぎ込み、回復するまで介抱したのだ。
 酒場(バル)を営むようになり、客足が安定し経営が軌道に乗って来た頃に起きた内乱。飲食業で学んだ知識を活かし、内乱復興の為に力を尽くしていた。

 人を介抱するのには慣れていた……。
 最愛の人が満ち足りた慈愛と夢の様な平穏を胸に抱き、静かに旅立ったあの日を思い返し、二人の回復を祈り懸命に面倒を見続けた。
 そうして意識を取り戻したアスセナスは、ユージーンに多大な謝意を述べた。だがどう見てもアスセナスの整った容姿は一般の民とはかけ離れており、雰囲気や所作からも何処かの貴族か高い身分の者なのだろうというのはすぐに分かった。案の定、小フリュイ公国の大公なのだと極秘に打ち明けてくれた。
 公女である娘のスズランと二人、追手から逃れる為に様々な地域を転々としてシュサイラスアまで流れ着いたのだという。
 更にアスセナスは無理を承知で頼み込んできた。

 ──このまま、娘をここで預かって欲しい──

 自分にはもう時間が無いのだと。
 本当は誰よりも傍にいて守りたかったのはアスセナス本人だった筈だ。
 だが、それができない現実への激しい悔しさ。
 すぐそこまで迫っている追手の気配。自分がこのまま一緒に居れば、娘も確実に巻き込まれてしまう。