「蓮、さん……っ……」
震える声。
その唇が、俺の名前を形にする。
………それだけで、喉の奥が焼けるみたいに熱くなる。
その瞳に映っているのが“俺”だという事実だけで、立っていられないほど心臓が跳ねた。
(……そんな顔、すんな)
(そんな声で、呼ぶな)
……俺以外に、見せるな。
そんな言葉が、喉の奥で形になりかけては崩れていく。
「………っ……///」
息が詰まる。
目の前の存在が、“守るべきもの”から“守りたいもの”へと変わる瞬間。
その境目は、あまりにも一瞬だった。
崩れていく。
これまで積み上げてきた価値観も、理屈も、全部、全部………。
──世界が、反転する。
灯台の光が、その背中を照らしていた。
銀色の波が寄せては返し、まるで何かを祝福するみたいに揺れている。
俺の人生に、こんな光景はもう二度と来ない気がした。
いや、来なくていい。
ただひとつだけ。
今ここにいる“こいつ”だけは──
俺はもう、離さない。
たとえ、この手の中にあるものが、どれだけ嘘を重ねていたとしても。



