「…………うわ、」
由良から、小さく漏れた声。
その瞬間、店の奥から現れた金髪の男が「あ、今“うわ”って言った〜」とケラケラ笑う。
「ひっど。久しぶりなのに」
男はそのまま迷いなく由良のすぐ隣まで来ると、覗き込むみたいに顔を寄せた。
………近い。
「何してんの? 珍しく女の格好してるじゃん」
「そんな言い方だと、私が男みたいじゃん。こっちが自然体なの」
少し邪険にしながらも、呆れたように言葉を返す由良。
………その空気が、妙に自然で。
グッとこぶしを握り締める。
男は「あは、そっか」と笑いながら、由良の胸元を見る。
「あれ、そんなのつけてたっけ」
「あ、これは…………」
バッと、由良が反射的にネックレスを隠す。
その仕草を見た男が、ニヤッと笑った。
「え、かわい〜。妹ちゃんそういう顔するんだ」
「うるさい」
口では嫌そうにしてるのに、本気では拒絶してない。
その距離感が、妙に腹立たしかった。
……なんなんだよ、コイツ。
俺の知らない由良を、当たり前みたいに知っている。
俺がようやく見られるようになった表情を、コイツは昔から知ってるみたいに笑う。
──それが、無性に気に入らなかった。


