君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~



胸元で揺れる三日月を、由良はまるで壊れ物みたいにそっと指先で撫でた。

黒石が照明を反射して、静かに瞬く。


「……めちゃくちゃ、似合ってる」


そう言葉にした瞬間、由良の頬が一気に赤く染まった。
視線を逸らすように俯き、小さくネックレスを握りしめる。


……ダメだ。
そんな顔、見せんな。

これ以上見てたら、本当に理性が飛びそうになっちまう。


だから…………。
誤魔化すように息を吐いた、その時だった。



「…………ごめんね」


ぽつり、と。

聞き取れるかどうかも怪しいほど小さな声で、由良が呟いた。


───ごめん?

思考が、一瞬止まる。



……誰に謝ってる。
何に対してだ。

さっきまで、お前は確かに嬉しそうだった。
ネックレスを見つめる目も、笑った顔も、全部本物に見えたのに。


───なのに、どうして。
今にも泣き出しそうな顔をしてる。



「……おい」


思わず低く声をかける。
けれど、由良は顔を上げない。

長い睫毛が伏せられたまま、小さくネックレスを握りしめている。

その指先が、わずかに震えていた。


胸の奥がざわつく。
まるで、誰か別の人間を思い浮かべながら、俺からこれを受け取っているみたいな──

………そんな、置いていかれる感覚。



「……由良?」


今度は少しだけ優しく名前を呼ぶ。

すると由良は、ハッと我に返ったみたいに肩を揺らして、無理やり笑みを作った。


「……あ、すみません。なんでもないです」


嘘だ。
そんなの、見れば分かる。

───けれど、それ以上踏み込もうとした瞬間。



まるで、なにかを我慢するように。
グッと、由良がきつく唇をかみしめた。