「……ってか、そもそも由良って彼女いんの?」
不意に投げ込まれた言葉に、思わず背筋が凍りついた。
陽人さん……?
なぜ今の流れで、わざわざ火に油を注ぐような質問を放り込むんですか。
「たしかに。それは僕も気になるな」
楽しげに顎をなでる大晴と、ばっちり目が合う。
大晴さん……?
なぜそんな、獲物を見つけたような怪しい笑みを浮かべていらっしゃるのですか。
「私からもお願いします。………由良さんのデータに情報を追加したいので。」
話に乗っかるように、すかさず李兎がポケットからスマホを取り出し、画面に指を滑らせた。
李兎さん、ここはあなたが論理的に場を収めてくれるところでしょう。
というか、いつの間に私の「データ」なんて作っているんですか。怖すぎますって……。
ツッコミどころが多すぎて、もはや声も出ない。
────私はただ、この気まずい沈黙が早く過ぎ去るのを待つしかなかった。
けれど────、
「…………いるのか?」
地を這うような低い、けれどどこか切実な響きを含んだ声が、夜の空気を震わせた。
ゆっくりと顔を上げた蓮さんと、視線が真っ向からぶつかる。
────蓮さん。
なぜあなたまでそんな、答えを恐れるような目で私を見るんですか。
暗闇の中でまっすぐに射抜いてくる、彼の真剣な眼差し。
”いない”と答えれば期待を持たせ、”いる”と答えればこの場が凍りつく。
究極の二択を突きつけられ、私は冷や汗が背中を伝っていくのをただ感じていた────……



