君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~

♠ Ren




鼻を突く鉄錆の匂いと、アスファルトに撒き散らされた鮮血。

静まり返ったその場所は、もはや見慣れた溜まり場ではなく”死地”と化していた。





「っ、おい、だいじょうぶか……!?」


「…………ぁ、そう、ちょ………」



弱々しく漏れる声を拾い上げ、
俺はうっすらと意識がある下っ端を、ゆっくりと壁によりかかせる。





「どうした?なにがあった?」


「………急に、奴らがたまり場に乗り込んできて………フードを被ってて相手の正体もよくわからなくて、それで………」



苦痛に顔を歪める仲間の言葉。



正体不明の襲撃者集団────組織的で、迷いのない”狩り”の痕跡に、思わず奥歯がギリリと鳴る。






「……他の奴らはどうした?」


「……あっちで、まだ、乱闘が…………」




耳を澄ますと、壁の向こうから微かに聞こえてくる怒鳴り声や、金属がぶつかり合う重たい音。


「っ、」






奥歯を噛み締める。

肺に吸い込む空気さえも、後悔で熱く焼けているように感じた。




………間に合わなかった。

たまり場にいれば、すぐに参戦できたのに。
俺が、学校になんて行かなければ。






「…………遅れて、悪かった」

「っ、いえ、総長は…………」



「…………あとは、任せろ。”月華”は俺が総長の名に懸けて絶対に守り抜く」






「総長………すみません、俺………」


「お前は気にしなくていい。もうすぐ応援が到着する。ゆっくり休んどけ」



「は、い………」





力なく、ゆっくりと目を閉じていく下っ端の顔を見届ける。


……そのまぶたに刻まれた傷跡が、俺の怒りを限界まで押し上げた。