「好き、じゃないんですか……?なのに、蓮さんの人生は橘花さんのもの、って………」
血が繋がっていないのなら、それはなおさら”呪い”のように聞こえる。
愛でもなく、血縁でもない。
それなのに、人生を捧げるなんて───
「………私からは詳しくは話せませんが、蓮にもいろいろと事情があるんです。」
フッと、静かに目を閉じた李兎。
その表情は、友人の立ち入ることのできない聖域を必死に守っているようでもあった。
「そう、ですか………」
「勘違いするなよ。俺は別に桃華に縛られてるわけじゃない。………これは俺が、好きでやってるんだ」
ソファから身を起こしたレンさんが、冷たく言い放つ。
自嘲すら消えたその声は、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
「蓮さ、」
「………桃華、明日は来るらしいぞ」
私の言葉を遮るように、被せて口を開いたレンさん。
………ちょっと、深く踏み込みすぎたかな。
「…………そうなんですね。めずらしいです」
空気を察した李兎が、淡々と話を合わせる。
「久しぶりに一日フリーらしい。今朝、連絡が来てた」
「じゃあ…………」
「………いいか、お前、今話したことは絶対に桃華に言うんじゃねぇぞ」
ジッと、私を映す深緑色の瞳。
その眼光は、先ほどまでのズボラな男のものとは思えないほど鋭く、圧倒的な質量を持って私を射抜いた。
「………はい……」
喉の奥から絞り出すような返事しかできなかった。
……この瞳、好きじゃない。
見透かされているような、それでいて抗うことを許さないような威圧感が───
(………ほんと、調子くるう。)

