「………っ、えっ///」
彼女は目を見開いたまま、息をするのも忘れたように石像の如く固まった。
その白い頬が、見る間に鮮やかな朱色へと染まっていく。
(──ここまでゼロ距離で顔を合わせられては、これ以上隠し通すのは不可能か。)
私は小さく口角を上げると、観念したようにふっと笑みを深めた。
「あーあ、バレちゃいましたか………」
先ほどまでの気弱な聲音を綺麗に捨て去り、低く艶を帯びた本来の声で、彼女の耳元にそっと囁きかける。
「姫、このことは他のみんなには内緒ですよ?」
驚きに微かに震える彼女の顎を、私の指先でクイッと持ち上げた。
上目遣いになった彼女の視線を、逃がさないよう真っ直ぐに固定した──まさに、その時だった。
「────やめろっ!!!!」
不意に、階下の喧騒の中から、静寂を切り裂くような悲痛な叫びが響き渡った。
「この声って………」
「────蓮くんっ!!」
あたりに甘く張り詰めていた空気は、一瞬にして霧散した。
彼女の顔からサーッと血の気が引いていく。
彼女は弾かれたように私の手を振り払うと、ガシャッと荒々しい音を立てて、屋上の低いフェンスから身を乗り出した。
「わわっ、危ないですよっ!?」
私は咄嗟に“気弱な一般生徒・由良”の顔へと戻り、情けない声を張り上げながら、彼女の細い腰を後ろからガシッと抱きとめるようにして強引に引き戻した。



