君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~




「…っ……氷晶の五戦華?なんですか、それ」



思わず口を突き出そうになった声を、私は間一髪で喉の奥へと呑み込んだ。


一般生徒のフリをして、慌ててきょとんとした表情を取り繕う。




「ん? ああ、”氷晶の五戦華”はこっちの世界でも結構有名だぜ? 特に最近はな」


「……最近? なにか、あったんですか……?」



なるべく無邪気な好奇心を装って問いかける。


……けれど、衣服の下ではドクドクと警報のように暴れる心臓を、必死に抑えつけていた。




「あー、あくまで噂だけど、アイツら今、裏のコミュニティで相当派手に暴れてるらしいんだ。なんでも、主要メンバーのひとりがいなくなったとかで、その捜索のために躍起になってるって話だ。上の奴らが大騒ぎしてて、その余波が俺たちの耳元にまで降ってきてるんだよ」


「そ、うなんですか……」



かろうじて絞り出した声が、微かに震える。



────暴れてる

────主要メンバーがいなくなって

────捜索のために躍起に





「由良……? お前、大丈夫か? なんか、顔色が変だぞ……?」

「…………」


蓮さんの訝しげな声が、遠くの方で聞こえる。





(なんで、どうして……)



そんな最高機密であるはずの情報が、一般の暴走族がいる”こっち”の世界にまで漏れているの……?



────まさか、あの男が情報を流した……!?



脳裏にこの世で一番憎い存在がよぎり、全身の血がスッと冷たくなっていく。