だけど──いない。
どこをどれだけ探しても、由衣の姿はどこにもなかった。
あるのは、床に転がったままピクリとも動かない敵の群れだけ。
監禁されていたはずの場所に、彼女の気配だけが綺麗に消えている。
「蓮、いない……! 奥の部屋も全部見たけど、誰もいなかった!!」
息を切らせた大晴の声が、絶望を孕んで響く。
そして────
「ねぇ、この状況からしてさ。もう、由衣は……」
────裕太のその言葉を聞いた瞬間、心臓がドクンと嫌な音を立てて跳ね上がった。
冷たい汗が、一気に全身から噴き出す。
誘拐されたはずの由衣が、敵が全滅した現場から、跡形もなく消えている──。
「なんでだよ……どこ行ったんだよ、由衣……!」
あいつらを全滅させた何者かが、由衣を連れ去ったのか────。
目の前が暗くなるような最悪の予感が、俺の思考を支配していく。
───だが、
狂いそうなほどの焦燥感に駆られる俺たちの後ろで、ただ一人、異様な男がいた。
────由良だ。
あいつは大切な由衣がいないというのに、絶望するわけでもなく、ただ冷徹に、床に転がる連中を見下ろしている。
その姿には、焦りも、怒りも、微塵も感じられなかった。



