明らかに何かを知っている、あるいは何か最悪な事態を予感している─── 。
そんなアイツの頑なな態度と、尋常じゃない殺気に、俺の胸の中にざわりとした不気味な違和感が広がる。
(何を隠してやがる、由良……)
向こうで何が起きているのかは分からない。
……だけど、由衣が危ないかもしれない状況で、引き下がる選択肢なんて俺には最初からなかった。
「……だから何だよ。どんな場所だろうが、由衣がいるなら、俺が行かない理由になんてならねぇんだよ!」
俺は胸ぐらをつかむ勢いで一歩踏み出し、由良の冷徹な視線を真っ向から睨み返した。
───絶対に引き下がる気はない。
俺の目の奥にある敵意を、由良はただ冷ややかに見つめ返してくる。
……夜の暗闇の中、息が詰まるような沈黙が流れた。
────どれくらいの時間が経っただろうか。
「……はぁ」
やがて、由良はひどく億劫そうに、わずかなため息を吐き出した。
視線が、俺の顔からゆっくりと外される。
「……好きにすれば。言っとくけど、何があっても俺は責任取らないから」
吐き捨てられた声は、どこまでも冷酷で、突き放すようだった。
……だけど、そこには確かに「拒絶を諦めた」響きがあった。
「言われなくても、好きにさせてもらう」
由良はフッと自嘲気味に口元を歪めると、俺たちに背を向け、歩き出す。
「李兎、ナビはもういい。……お前ら、アイツの後ろを追うぞ」
背を向けて移動を始める由良の背中を、俺は一歩も遅れまいと、鋭い視線のまま追いかけ始めた。



