「こんな重大なミス、裏切り者判定されたっておかしくない。俺だって本当はそんなことしたくないけど……たとえお前でも、由衣を危険に晒す奴には容赦しない」
俺たちにはわからない、二人だけの会話。
だけど……今この会話に、二人の空気に、口を挟まない方がいい。
────それだけは、ここにいる誰もがそう察しただろう。
「……そうだね。この事件───俺なりに、ケジメをつけるつもりだよ」
湊はデスクの上のノートPCを引き寄せると、眼鏡の位置をクイと直した。
────さっきまでのチャラついた笑みは跡形もない。
スイッチが切り替わったように、その瞳に冷徹な光が宿る。
カタタタタタタタタッ!!
「……っ!?」
次の瞬間、部屋の中に鼓膜を狂わせるような打鍵音が響き渡った。
残像が見えるほどの速度で動く湊の指先。
画面を流れる無数の文字列。
横で見ていた李兎たちが、
「嘘だろ……何だ、この書き換え速度……っ」
と息を呑んで絶句する。
全国五位のハッカーである李兎が手も足も出なかったセキュリティが、湊の手によって、信じられないスピードで次々と無力化されていく。
「はい、見っけ。……▲▲地区の廃倉庫。タイムリミットは、あと三十分ってところかな」
────ものの数分だった。
大嫌いなはずの男の圧倒的な『プロ』の力を前に、俺はただ、突きつけられた画面を凝視することしかできなかった───……



