♠︎ Ren
「────わかりません」
その言葉は、静まり返った部屋にあまりにも残酷に響いた。
「───は?」
「だから、この写真一枚だけでは居場所を特定出来ないと言っているんです。」
「特定、できない……?」
耳を、疑った。
……だって、俺たちの目の前にいるのは全国五位のハッカーだ。
今まで李兎が『できない』と言ったことなんて、一度もなかったのに。
カタカタと虚しく響く、キーボードの音。
カタ、とそれが完全に止まった瞬間、俺の視界がぐにゃりと歪んだ。
「これ、ただの誘拐じゃないです。最初から私たちが追跡することを見越して、何重ものフェイクが仕掛けられてる。……手が出せない」
李兎の言葉が、現実味を帯びて俺の頭に突き刺さる。
…………嘘だ。
そんなわけがない。
今この瞬間も、あいつは俺の知らない場所で、怖くて泣いているかもしれないのに。
「クソォッ!!」
行き場のない怒りをぶつけるように、近くの壁を思い切り殴りつけた。
ゴン、と鈍い衝撃が拳に走るけれど、今の俺には一ミリの痛みも感じられない。
胸を締め付けるのは、圧倒的な無力感。
早く見つけて抱きしめてやりたいのに、手がかりすら掴めないもどかしさに、俺は狂ってしまいそうだった。



