────『ゆ、い、は……わる、く、ない、よ……』
────『待ってて。……いつか、必ず戻ってくるから。そのときは────』
あの日からずっと、私の心の一部も、あの夜の闇に取り残されたまま。
張り詰めていた糸がふっと切れたように、視界がじんわりと滲んでいく。
「……紘たちに、会いたい…………」
胸の奥に澱のように溜まっていた本音が、声にならないほど小さな吐息となって、唇から零れ落ちた。
押し殺したはずの寂しさと、どうしようもない弱さが、冷え切った空気の中にぽつりと広がっては消えていく。
かつて命を分け合うようにして一緒にいた、あのみんなの笑顔が恋しくて、私はそっと自分の身体を抱きしめた。
───その、一瞬の隙だった。
「──ッ!?」
背後に、気配。
気がついた時には、すでに視界が真後ろからの影に覆われていた。
いつもなら、今の私なら、確実に回避できたはずの間合い。
……それなのに、身体が言うことを聞かない。
『"また"前みたいなことになったら……』
脳裏を過ったのは、さっき思い出したばかりの一年前の悪夢。



