──── 20XX年、4月23日。
今から約一年半前、私はとある巨大組織によって誘拐された。
暗闇に一人閉じ込められていた私だったが、居場所を突き止めて突入してきた紘たちの手によって無事に救出される。
……その場に居合わせた敵組織の人員は全滅し、あたりにはようやく静寂が戻った。
安堵した紘が私を強く抱きしめ、お互いに無事を喜び合った──まさにその瞬間、静まり返ったはずの現場に、ソイツは音もなく現れた。
────九条。
本名は、九条 大和(くじょう やまと)。
巨大犯罪組織Goshawkを率いるボスであり、裏社会において絶対的な権限を持つ、災悪であり最凶の男だ。
完全に勝利を確信し、油断しきっていた私たちが、突如として現れた彼の動きに反応できるはずもなかった。
九条の手元で無機質な金属が光ったと思った瞬間、鼓膜を裂くような銃声が響く。
────はじめに、紘が撃たれた。
弾丸は急所を外れており、幸いにも絶命には至らなかった。
……しかしそれは、一歩間違えれば確実に命を落としていたであろう、あまりにも淒惨な重傷だった。
九条が引いた引き金。
その銃口が狙っていたのは、紘ではない。
───明らかに私の方を向いていた。
つまり、狙われていたのは私自身だったのだ。
……それなのに、私を守ろうと咄嗟に身体を動かした紘が、身代わりに銃弾を受けた。
血を流して倒れる紘を前に、私の身体は恐怖で動かない。
そんな硬直した空気の中、九条は冷徹に再び銃口をこちらへ向けてきた。



