由衣にはまだ何か事情があって、俺への気持ちを言葉にしてくれるわけじゃない。
確かにどこかで一線を引かれているし、まだ届かない壁はある。
だけど──この真っ赤になって照れまくる可愛い姿を見たら、嫌でも分かってしまう。
(……あぁ。俺、まだ、諦めなくていいんだな)
さっきまで胸の奥を支配していた、暗くて冷たい絶望が、嘘みたいに消えていく。
「その……悪かったな。この前、お前の話を聞かずに冷たい態度とっちまって」
「いっ、いえ……!伝えていなかった私も悪かったので……」
一度は失いかけた未来への希望が、由衣のこの愛らしい反応ひとつで、俺の胸の中にドクドクと力強く戻ってきた。
───事情があるなら、いくらでも待ってやる。
由衣がその壁を取り払って、俺の胸に飛び込んできてくれるその日まで、何度だってあがいてやる。
「わりぃ。……お前が可愛すぎて、我慢できなかった」
悪びれずにそう言ってニヤッと笑うと、由衣はさらに顔を真っ赤にして「れ、蓮さん……!」と俺の胸をポカポカと小突いた。
……その小さな拳の痛みが、今の俺にはたまらなく愛おしかった。



