君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~



「……蓮、さん? 大丈夫ですか……?顔色が……」


心配そうに俺の顔を覗き込む由衣の声に、ハッと意識が引き戻される。


……だが、俺の視線は由衣を通り越し、その背後に立つ男──由良へと向かった。



由良は何も言わず、ただ由衣の背中をじっと見つめている。

ふと、由衣が振り返り、由良と小さく頷き合った。




───声の無い、二人だけの合図。


息を呑むほど自然に交わされたそのアイコンタクトが、俺の胸を鋭く突き刺す。



(あぁ、やっぱりな……)



由良のその瞳を覗き込めば、嫌でも分かってしまう。

───あいつの目には、良くも悪くも由衣しか映っていない。


周囲の状況なんてどうでもいいと言わんばかりの、執着に満ちた、真っ直ぐな視線。


それが”男が女に向ける目”にしか見えなくて、俺のなかの何かが狂いそうになる。






「……わりぃ。今、なんて言った?」



俺の掠れた声に、由衣は戸惑ったように瞬きをした。


その横で、由良の視線が、今度は俺を値踏みするように冷たく射抜いてくる。



(あいつ……あの言葉も、全部嘘だったのかよ)






脳裏に、数日前の由良の言葉が蘇る。


──『まだ諦めなくてもいいんじゃない?』



少しだけ優しそうに微笑んで、俺の背中を押すようなことを言ってきたあいつ。


由衣も俺に気があるんじゃないか、なんて期待を持たせるような言い方をして。



(俺を油断させるために、わざと言ったのか……?)


今の二人の、誰の立ち入りも許さない絶対的な空気を見せつけられれば、答えは嫌でも一つに絞られた。



あの優しい言葉は、恋敵である俺をあざ笑うための、ただの罠だったんだ。


そうやって余裕をぶっこいて、裏では由衣のすべてを独り占めしている。