君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~





「…………あのっ」



弾かれたように顔を上げた由衣の瞳と、再びバチッと視線がぶつかった。

その強い眼差しに宿る真っ直ぐな光に、俺は思わず言葉を失う。



「これから、私たち───私と、由良はアイツ───九条に対抗します。」




(あぁ……また、か…………)


眩しいはずのその光が、今の俺には酷く痛い。

由衣のなかには、当たり前のように”由良”がいるんだ。



────『私と、由良は』


さっきから何度も耳に障る『私たち』という単語。


それは”私”という一人の人間を表す言葉じゃない。

まるで、二人が一緒にいることが世界のルールであるかのような、絶対的な響き。



────俺の知らない由衣を、アイツはどれだけ持っているんだろう。






「……なので、蓮さん。私たちはまず九条の動きを探ろうと思います。由良が言うには、アイツの狙いはきっと──」


由衣の声が、鼓膜を滑り落ちていく。

……言葉の意味なんて、ひとつも頭に入ってこない。




視線の先で動く由衣の唇を見つめながら、俺の思考は『由衣と由良』の二人の世界に囚われていた。


俺の知らないところで、二人はどれだけの時間を共有してきたんだろう。

どれだけ深い絆で、お互いを守り合ってきたんだろう。



命をかけるような危険な作戦に、迷わず一緒に飛び込めるくらい。


俺の入る隙間なんて、最初から一ミリだって無いみたいに。