───だけど。
胸の奥で、罪悪感がぐるぐると渦を巻く。
昨日、私は蓮さんにキスをされて、あんなにも胸をときめかせてしまった。
───一瞬でも、彼に心を委ねてしまいそうになった。
そんなどうしようもなく最低な私が、
こんなにも純粋で。
こんなにも素直な女の子に。
───これから、どう接すればいいというのだろう。
「……由良くん? どうしたの、顔色が悪いよ?」
また、私のことを「由良くん」と呼ぶ。
不器用な彼女にとって、目の前にいる女の私が、あの時の「由良くん」だとはまだ脳内が追いついていないのかもしれない。
私は、彼女が混乱する呼び方をあえて訂正することもせず、握られていた手をゆっくりと引き抜いた。
「えっと、あの。大丈夫……です。心配してくれてありがとうございます」
「本当に……? 何かあったなら、私にも話して?」
「本当に何でもないんです。ただ……」
私は少しだけ視線を落とし、感情の起伏を見せないように、淡々と───だけど少しだけ濁した声で告げた。
「ごめんなさい。……私、やっぱりあの時の約束、守れないかもしれない」
「え……? 約束って…………」
驚いたように目を見開く彼女に、私はそれ以上、何も言わなかった。
───これ以上踏み込ませるつもりもないし、言い訳をするつもりもない。
ただ、
かつての自分の割り切りが、今になって自分自身の首を絞めている。
その事実が、どうしようもなく歯がゆくて。
「由良くん……まさか───」
ハッと目を見開いた彼女が、口を開こうとした。
───その、瞬間だった。
ガチャリ、と部屋のドアが開き、大勢の足音が部屋になだれ込んでくる。



