君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~




───バタン、とドアが勢いよく開く。



「由良、くん……!───ううん、由衣ちゃん……っ!」

「あ……桃華、さん」




そこに息を切らせて立っていたのは、月華の"姫"であると同時に、私の護衛対象である桃華で。



昨日のただならぬ騒ぎをどこかで聞きつけたらしく、私のことを心配して、久しぶりに顔を出したみたいだった。





───つい最近、蓮さんからのメールで


「今までお前が『由良』だと思っていた地味男が、実は男装した女だった」


と真実を告げられたばかりの彼女は、まだ混乱しているのだろう。




女の子の格好をした私を前にして、前からの癖なのか、一瞬だけ昔の偽名が口を突いて出ていた。








「大丈夫!? 蓮くんから何か大変なことが起きてるって聞いて、心配で心配で……!」



タタッと駆け寄って私の手をぎゅっと握りしめてくる彼女。


───その瞳には、まっすぐな心配の色が浮かんでいた。



(相変わらず、純粋な人だなぁ……)







私がまだ、”由良”の名前を騙って男装し、彼女の護衛のような立ち位置にいた頃。



私は、彼女に”蓮さんとの距離を縮めるための相談役”として、近づいた。




……その時、彼女にまったく同情しなかったわけではない。



本当に純粋な心で蓮さんを愛しているみたいだったし、


ただでさえ、裏社会のゴタゴタに巻き込まれそうになっているのだから、彼女には少しでも幸せになってもらいたかった。