「え───?」
驚いてパチパチと瞬きをする私を、彼は少しだけ気まずそうに、けれど真っ直ぐに射すくめてきた。
「…………一人でメシ食うの、つまんねぇだろ」
理由になっていない理由。
……けれど、それは明確な『これからのお誘い』だった。
(さっそく、第二関門突破───)
ターゲットの方から日常的な接触の機会を差し出してくれた。
これ以上ない完璧すぎる成果に、私は心の中で小さく不敵な笑みを漏らした。
「えっ、いいんですか!?………僕なんかでよければ! 僕も、転校してきたばかりでまだ全然友達が出来なくて、すごく心細かったんです……!」
本当に嬉しそうに、パァッと顔を輝かせる。
そんな私の必死すぎる喜びように、彼は少し引いたように眉をひそめた。
「………だろうな」
ポツリと呆れたように零された低い声。
小さすぎてよく聞き取れず、私は首を傾げて聞き返す。
「え、何か言いました?」
「………いや、なんでもねぇ」
彼はフッと小さく鼻で笑うと、ポケットから片手を出して、私の頭をポンと軽く小突いた。
その予想外の子供っぽい扱いに、今度は演技ではなく、一瞬だけ本当に面を食らってしまう。
「…………じゃあ、改めてよろしくな、椎名」
────初めて、彼から『椎名』と苗字を呼んでもらえた。
ターゲットとの距離が確実に縮まったことを確信しながら、私はここで、あらかじめ用意していた次の一手を仕掛けることにした。
わざとらしく、少しはにかむように目線を斜め下に泳がせる。



