「いや、強くはねぇと思う。……少なくとも、戦い慣れてるオーラはまったくしなかったな」
「……じゃあ、すごくイケメンだったとか?」
うーんと首をひねる桃華に、首を振る。
「…………いや。この世にこんな奴いるのかってくらい、絵に描いたように地味な奴だった」
喧嘩が強いわけでも、目を引くような派手さがあるわけでもない。
ただのどこにでもいる、気弱な男子生徒。
「え、じゃあどこが…………」
「俺、もう寝るから」
これ以上詮索されるのも面倒になり、俺は会話を切り上げてソファにゴロリと寝そべった。
腕を目の上に乗せて光を遮り、再び深く目を閉じる。
────だが、意識を遮断しようとしても、頭に浮かんでくるのはあの地味な男のことばかりだった。
アイツは、一体なんなんだ。
ビクビクと怯えて、ニコニコと気が抜けるようなお気楽な笑顔を見せていたが。
────あの無害すぎる態度の裏で、人知れない”なにか”を隠しているような、妙な違和感が拭えない。
だからといって、アイツに裏があると決まったわけでもねぇが。
「……ふっ」
暗闇の中で、小さく唇の端を上げる。
──まあ、最初からすべて見え透いているより、すぐに正体が分かっちまうのもつまんねぇか。
しばらくは、俺の暇つぶしになってもらう。
──椎名由良。
少しは、俺を楽しませろよ?



