「よかったぁ……。蓮くんの瞳に映っていい女の子は、桃華だけだから」
俺の言葉にすっかり安心したのか、桃華は花が咲いたような笑みを浮かべた。
────だが、俺の脳裏には、まだあの屋上でビクビクと怯えていたもやしっ子の顔がこびりついている。
「…………それにしても、」
「ん?」
「男の子にしても。蓮くんが誰かを気に入るなんて、よっぽどなんだね」
桃華の言葉が、静かに室内に響く。
──よっぽど、か。
確かに自分でもおかしいと思う。
ただの生意気で気弱な転校生のはずなのに、なぜあんな奴のことが頭から離れないのか、俺自身にもさっぱり分からなかった。
「…………」
「蓮くんが人に興味を持つなんていつぶりだろう…………。その人、やっぱり強いの?」
全国No.1の暴走族の総長である俺が気に留める男だ。
桃華がまず「強さ」を疑うのは当然だった。
……だが、思い浮かぶのはガタガタと情けなく震えていたあの線の細い身体だ。



