「……だから、そんな顔すんな。俺はお前を困らせたくて言ったんじゃない」
いつものように、ぶっきらぼうだけど優しい、総長としての顔を作って見せる。
「……はい。ありがとう、ございます」
由衣は、今にも泣き出しそうなのを必死に堪えるように、ぎゅっと拳を握りしめて俯いた。
その姿を見て、胸の奥がズキリと痛む。
───やっぱり、俺の告白はこいつを困らせてしまっただけだったんだ。
分かっている。
───これで、最後にする。
───もう、困らせない。
だから、一瞬だけ――…
「蓮さん……?」
不思議そうに顔を上げた由衣の視線を遮るように、俺は大きくて少し熱い手のひらで、彼女の目を優しく覆った。
視界を奪われ、小さく息を呑む由衣。
遮られた暗闇の中で、由衣の長い睫毛が、俺の手のひらをくすぐるように微かに震えている。
「蓮、さ……」
「……動くな。すぐ、終わるから」
掠れた声で囁き、俺はゆっくりと顔を近づけた。
由衣の優しくて甘い体温が、すぐ近くに迫る。
───そして。
「───────」
触れたところから、俺の抑えきれない愛しさが全部伝わってしまいそうで、すぐに名残惜しくそれを離す。
ゆっくりと手を退けると、そこには、頬を林檎のように真っ赤に染めて、潤んだ瞳で俺を見上げる由衣の姿があった。
「───じゃあ、俺、ちょっと下に行ってくるから……少し一人で落ち着け」
俺はそれ以上由衣の顔が見られなくなって、今度こそ逃げるようにアジトのドアへと歩き出した。
───振り返れば、今度は本当に、理性が吹き飛んで強く抱きしめてしまいそうだったから。
背後から小さく聞こえた、戸惑うような
「蓮さん、あ、あの……」
という声を背中に受けながら、俺はバタンとドアを閉めた。



