─── ♠ ───
「……ちょっと、頭冷やしてくる」
それだけ言い残すと、由良はポケットに手を突っ込んだまま、乱暴にドアを開けて部屋を出ていった。
その後を追うように、陽人たちも
「じゃあな……」
「あまり思い詰めるなよ」
と、重い足取りで次々とアジトを後にした。
───バタン、と静かにドアが閉まる。
さっきまでの張り詰めた怒気が嘘のように、部屋の中には、耳が痛くなるほどの静寂が広がっていた。
残されたのは、俺と由衣の二人だけ。
ソファに座る由衣の肩は、心なしか小さく震えているように見えた。
だけど、その瞳は、まだ俺たちの知らない”アイツ”への怒りと、どこか怯えを含んだ色に染まったままだ。
「……由衣。大丈夫か」
隣に腰を下ろし、できるだけ優しい声をかける。
だけど由衣は、ハッと弾かれたように俺を見て、無理に作ったような歪な笑顔を浮かべた。
「あ、はい……大丈夫、です。……蓮さん、心配かけてすみません」
───大丈夫な、わけがない。
目の前にいるのに、由衣の心はここにはない。
俺の届かない、遠い場所で、別の”誰か”の存在に支配されている。
――その事実が、俺の胸の奥を猛烈にかき乱した。
今までずっと、隣にいるのが当たり前だった。
いつだって、お前の1番近くにいるのは俺だと思ってた。
……なのに、俺の特等席(そば)から、こいつが消えてしまいそうな――そんな底知れない恐怖が一気に押し寄せてくる。
「……ちょっと、頭冷やしてくる」
それだけ言い残すと、由良はポケットに手を突っ込んだまま、乱暴にドアを開けて部屋を出ていった。
その後を追うように、陽人たちも
「じゃあな……」
「あまり思い詰めるなよ」
と、重い足取りで次々とアジトを後にした。
───バタン、と静かにドアが閉まる。
さっきまでの張り詰めた怒気が嘘のように、部屋の中には、耳が痛くなるほどの静寂が広がっていた。
残されたのは、俺と由衣の二人だけ。
ソファに座る由衣の肩は、心なしか小さく震えているように見えた。
だけど、その瞳は、まだ俺たちの知らない”アイツ”への怒りと、どこか怯えを含んだ色に染まったままだ。
「……由衣。大丈夫か」
隣に腰を下ろし、できるだけ優しい声をかける。
だけど由衣は、ハッと弾かれたように俺を見て、無理に作ったような歪な笑顔を浮かべた。
「あ、はい……大丈夫、です。……蓮さん、心配かけてすみません」
───大丈夫な、わけがない。
目の前にいるのに、由衣の心はここにはない。
俺の届かない、遠い場所で、別の”誰か”の存在に支配されている。
――その事実が、俺の胸の奥を猛烈にかき乱した。
今までずっと、隣にいるのが当たり前だった。
いつだって、お前の1番近くにいるのは俺だと思ってた。
……なのに、俺の特等席(そば)から、こいつが消えてしまいそうな――そんな底知れない恐怖が一気に押し寄せてくる。



