返事すらしない由良と、見たこともない表情で静かに怒りを燃やす由衣。
……二人の間に流れる異常な空気感に、俺はそれ以上、言葉を続けることができなかった。
───静まり返った部屋の中で、由良が、ぽつりと呟く。
「───ほんとに、アイツはどこまでも俺たちのことを潰しにかかってるんだね」
怒りを通り越して、どこか諦めすら混じったような、冷え切った声。
───その言葉は、隣にいる由衣だけに向けられたもののようで。
由衣はその言葉に、小さく、だけど深く頷いた。
二人の視線の先には、俺たちの知らない"誰か"がいる。
「……おい、由良。アイツって、誰のことだよ」
陽人が戸惑ったように声をかけるが、二人はそちらを見ようともしない。
普段ならすぐに割って入るはずの俺も、ただ立ち尽くすことしかできなかった。
二人の間に流れる、部外者を一切寄せ付けない張り詰めた空気。
"アイツ"とは一体、誰なんだ――?
誰もその答えを持ち合わせていないアジトの中に、重苦しい沈黙だけが支配していた───…



