君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~




「俺が──────」



守る、と。


そう、言葉を絞り出そうとした──その瞬間だった。









ガッシャァァァン!!!!



張り詰めていた部屋の空気を無残にぶち壊す、凄まじい破壊音が響き渡って。




「総長!!!!……て、敵襲です!!」


さっきとは比べ物にならないくらい、顔面を蒼白にした下っ端が部屋に転がり込んできた。




「「「「「敵襲!?」」」」」


その場の空気が、蜂の巣をつついたような大騒ぎへと一変する。




「相手は!?いったいどこの族だ!!!!」

「陽人、落ち着いてください。……今、下はどんな状況ですか?」



今にも殴り込みに行きそうな陽人の首根っこを掴み、李兎が問い詰める。


……その声は冷静だけど、瞳の奥には静かな怒りの炎が燃えたぎっていた。





「そ、それが………」


「はやく答えろ!!!!」




机を激しく叩きつけ、普段は温厚な大晴が声を荒らげる。

……当たり前だ。

"月華"が、大切な仲間が誰かもわからない奴らに狙われているっていうのに、こんなところで黙って突っ立っていられるわけがない。




「どこかの族か?───それとも、」



大晴が再び下っ端に怒鳴りかけようとした、その刹那。






「───邪魔」


ヒュッ、と。


脳髄に突き刺さるような鋭い風切り音がして、目の前を”なにか”が通り過ぎた。




(っ、今のは……!?)



あまりの速さに、一瞬だけ思考が停止する。





「っ、通してください……!!」



次に俺の視界を掠めたのは、確かな体温を持ったモノ─────由衣だ。





「っ、由衣!!!!」


「───危ないので、蓮さんたちはそこにいてください!!」



引き留める俺の声なんて届かない。



由衣はまるで、陽炎みたいに。

フッと、その場から気配ごと姿を消した。




(待て、行くな──!!)




脳裏で、本能が警報を鳴らしている。



“あいつを今、行かせてはならない”と。



それと同時に、冷や汗が背筋を伝う。


この先に待っているのは、きっと、取り返しのつかない最悪の事態だ──と。