───確かに。
部外者である俺たちでさえ、その男の言うことが『正論』だと分かってしまった。
当たり前だ。
……いくら、由衣が強いとしても。
桃華の護衛という任務を背負っている以上、あいつは絶対に自分の身を後回しにする。
……自分の命なんて、最初から勘定に入れていないんだ。
───だからこそ、由衣を守る人間が必要だということくらい、痛いほど理解できる。
なら─────
俺が守る、と。
そう、喉元まで出かかった言葉を。
さっき男に突きつけられた冷徹な言葉が、無残に叩き潰した。
”生半可な覚悟”
───認めざるを得ない。
俺の覚悟なんて、その程度だったのかもしれない。
さっきあの男が放った、本物の殺気。
俺たちの生きる世界とは、次元の違う場所に住む二人の───ほんの一片。
それを見た瞬間、心の底から"怖い"と思ってしまったんだ。
まだ見ぬ未知の世界の、たった一片に。
俺は……臆病な恐れを、抱いてしまった。
きっと、俺たちは───住む世界の違う俺たちは、出会ってはいけなかったのかもしれない。
─────それでも。
愛した女を途中で手放すなんて、俺のプライドが絶対に許さなかった。
……なにより。
───俺が、人生で初めて、心の底から"これからもずっと一緒にいたい"と願った相手なんだ。
────それに。
『由良、お前は、俺が守るから───』
あの日、あの時、お前に誓いを立てたその瞬間から。
俺の心も、身体も、人生のすべてを捧げたあの時から。
俺のすべては───もう、お前のものだ。
(───上等だよ)
───由衣。
お前がどんなに暗く、危ない世界に身を置いていようと。
どれだけ血の香りがする凄惨な人生に立たされていようと。
俺は────────……
地獄の果てまでだって、お前に、ついていくから─────……



