君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~



懐かしいものを見るように店を見つめてから、ほんの少しだけ目を細めた。


「あ〜……懐かしい」




その声音は柔らかいというより、少しだけ遠かった。


店先を見つめる目が、今この街ではなく、もっと遠い場所を見ているみたいで。




────さっきまで泣きそうだったくせに。

今の由良は、肩の力が抜けているのに、どこか掴めない。


ただ昔を思い出しているというより、もう戻れないものを見ているような顔だった。




「俺の記憶が正しければ、たしか前に妹ちゃんたち、この店にカチコミ売ってなかった?……通りすがりの人たちからめっちゃ注目集めてたよ。ただでさえ、君たちは人目を集めるのにね〜」


「………違うよ。私のトッピングがちょっと注文と違っただけ。みんなはそれを怒ってくれたの」

「いや、あれはガチだったと思うけど」

「だから違うって」



由良が真顔で返すと、男が吹き出した。




「うわ、言い方そのまんま」

「なにが」


「……そういうとこ、由宇くんそっくり」



その名前が出た瞬間、由良の表情がほんの少しだけ止まる。



けれど男は、それ以上そこには触れなかった。


代わりに、どこか懐かしそうに空を見上げる。