思わずそいつに目を向ければ、そいつはは、逃げることもなく堂々と俺の視線を真っ向から見据えていた。
まるで最初から、──「お前みたいな部外者は、俺たちには一切関係ない」とでも言うような冷え切った目。
それは───こっちを、この“月華の総長”である俺を……ただの“蚊帳の外の人間”だと最初から決めつけた、あまりにも傲慢な視線だった。
「………そろそろ、いくぞ」
「……ん、分かった」
一切の迷いすら見当たらない、由良の短い肯定。
その言葉が終わる瞬間、“カケル”が由良の細い手首をその手のひらでガシリと掴んだ。
何のためらいもなく。
それが彼らの間では当然のルールであるみたいに。
俺がさっき、ほんの数分前に、この世の何よりも大切な壊れ物に触れるみたいに慎重に触れたはずのその白い手を。
───あいつは何の躊躇も配慮もなく、乱暴に引いて自分の世界へと連れていってしまう。
「──っ!」
去り際、"カケル"がこちらに投げたのは、勝ち誇ったような、神経を逆なでされるイラつく笑み。
”こいつは、お前の住む世界の住人じゃない”
言葉にこそされないけれど、そんな残酷な現実を正面から突きつけられたような気がして、ただ胸が苦しかった。
俺は言葉を失ったまま、ただひとり、冷たい砂浜の上に虚しく取り残される。
吹きすさぶ夜の潮風だけが、やけに冷たく俺の火照った頬を撫でては通り過ぎていった。
遠ざかっていく、黒い夜の闇に溶け込んでいく二つの背中。
───そのあまりにも遠い光景を、今の俺はただ、黙って見送ることしかできなかった。



