「…………蓮さん」
小さく、ぽつりと呟かれた声に、ピクッと身体が反応する。
────たったそれだけで、尖ってた警戒心が自然と薄れていくのが分かった。
「由良………」
俺の口から漏れたその名に、大晴たちが目を見開く。
────それでも、誰一人として声を出す奴はいなくて。
……ただ静かに、由良のことを見つめていた。
「っ、蓮さん、それに、みんな……!……今まで、騙していてごめんなさい……」
意を決したように口を開いて、バッと頭を下げた由良に、周りから思わず息を呑む音が聞こえた。
「え、ちょ、ちょっと待って……まさか、君が由良……?」
「は!?嘘だろ……。だってアイツは男で……」
「っ、でも、その声………」
「……………」
そして───。
次々にハッと目を見開き、驚きを隠せないメンバーたち。
……その反応を見るのが怖いのか、ぎゅっと目を瞑って未だに顔を上げない由良。
………気づけば、手が伸びていた。
その頭を、撫でてやりたかった。
安心、させてやりたかった。
───でも。
その手は由良の元へ届く前に、男によってパシッと叩き落とされた。
「生半可な覚悟で、由衣にさわるな」
中性的な声から一転、底を這うような重低音。
言葉や行動、選択をひとつでも間違ったら、視線だけで射殺されそうなほどの殺気。
「「「「「っっぅ、」」」」」
ビリビリとした空気に、その場にいた全員が金縛りに遭ったみたいに一歩も動けなくなった。
(っ、一体なんなんだよ、この男は……!!)
───しばらくの間凍りついていた空気を破るように、おそるおそる李兎が口を開いた。
「っ、続きは、中でやりませんか…っ……」
さすがの李兎でもポーカーフェイスは保てなかったのか、微かに青ざめてる顔と震える声。
そんな俺たちを見兼ねたのか、ふっと殺気を解いた男。
一気に威圧感が消えた空気の中で、俺たちはヒュッと息を吸い込む。
(……やっと、生きた心地がした)
そんな中、スッと無言で視線を交わした由良たちは――揃って同時にコクッと小さく頷いた。



