君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~




「───し、下に人が!!!!」



───人?


思い切った様子で叫んだ奴の言葉に、幹部たちの間に拍子抜けした空気が流れる。



「なんだ〜てっきり襲撃かと思っちゃった……」

「……とにかく、敵ではないんですね」



やれやれと肩をすくめ、再びソファに深く腰掛け直す大晴たち。


……だが、報告に来た奴はまだ何か言いたげに、じっと俺たちの様子を伺ってた。





「あ、でも……その、総長に会わせろって…」


「……俺に?どんな奴だ?」



───"月華"の総長である俺に、直談判しに来る命知らずが誰なのか。


最悪の事態を想定し、俺の目が自然と細くなる。……だが、次の言葉でその警戒は一瞬で吹き飛んだ。





「な、なんか、めっっちゃ美少女で……っ! この世にこんな可愛い子がいんのかってくらい、とにかくヤバいんスよ! 俺、あんな綺麗な子初めて見ました!」


アイドルを前にしたオタクのように、顔を真っ赤にして、身振り手振りで必死に訴えかけるそいつに、陽人が完全に引いた目を向けているのは置いておいて。




───「美少女」


そのワードが頭に滑り込んできた瞬間、心臓がドクン、と大きく跳ね上がった。







「っっっっっ!!!!」


考えるより先に、身体が動いていた。

ガタッと椅子を蹴立て、ドアへと向かって弾かれたように走り出す。









「おい、蓮!?どこ行くんだよ!」

「待ってください、蓮!いったいどういうことですか!?」


背後から陽人たちの困惑した声が響く。




「あ、もう一人、その子の後ろにイケメンの男もいたんですけど……そっちはなんか、ヤバい雰囲気っていうか……」



遠ざかる奴の声も、俺を引き留める声も、今の俺の耳には一切届かなくて。



───頭の中は、たった一人の存在で埋め尽くされていた。




(───っ、由良!!!!)