────でも。
私の思考を支配するように、さっきまで思い出していた紘の低く甘い声が、耳元で甦る。
『たとえこの先どんなことがあっても、俺は一緒由衣の側から離れないから。』
………そっか。
───私には、紘がいるんだ。
私と一緒に闇へと足を踏み入れ、数え切れないほどの禁忌を犯してきた、唯一無二の存在。
血に塗れた同じ世界を生きる紘だからこそ。
綺麗な世界にいる蓮さんじゃ決して許されないことも、すべて許されてしまう。
……もし。
もしも本当に、私と紘が”そういう関係”になっていたとしたら。
由良も、凪も、朔夜も。
由宇も、お父さんも、お母さんも。
……みんな、当たり前みたいに笑顔で、私たちのことを喜んでくれていたのかな。
───そう、紘の隣にいる私だったら。
誰も傷つかない。
誰も泣かない。
………それが、私の生きるべき正しい道のはずなのに。
(……なのに、どうして)
───私の頭の中は、今触れてはいけないはずの、蓮さんのことでいっぱいだった。
蓮さんの優しい声。
温かい手のひら。
………私のことを真っ直ぐに見つめてくれた、あの綺麗な瞳。
思い出せば思い出すほど、胸がちぎれそうなほど痛む。
私が蓮さんを想うことは、あの人を、そして私の大切な仲間たちをも破滅に導く大罪だ。
───分かっている。
痛いほど分かっているのに、どうしても心を消し去ることができない。
「っ……」
じわじわと胸の奥からせり上がってくる絶望感に、息がうまく吸えなくなる。
逃げ場のない暗闇の中で、私はただ一人、底なしの罪悪感に激しく追い詰められていった。



