君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~




──来い。

声にすら出さない、ただそれだけを示す、絶対的な無言の命令。




───あるいは。
彼らの領域に足を踏み入れてしまった部外者である俺への、露骨な拒絶。




「何の用───ああ、そっか」


由良は何かを瞬時に察したかのように、諦めを孕んだ目で細く瞳を細める。



そして───次の瞬間。

俺の腕の中から、由良の身体がするりと抜け出した。


……まるで最初から、そこに収まってなんかいなかったみたいに呆気なく。




「……………」


胸の奥が、ドクッと嫌な音を立てる。


さっきまで、あんなに泣いていたくせに。

あんなに俺へ縋っていたくせに。



今の由良の瞳には、もう俺の姿なんてこれっぽっちも映ってはいなかった。




そこにあるのは、完全に冷え切ってしまった事務的な、あまりにも冷酷な横顔。

自らの感情を全て心の奥底へ閉じ込めてしまったかのような、俺の全く知らない、見たこともない無機質な顔だった。




由良は一切の迷いを見せることなく、まっすぐにその“カケル”と名乗る少年の元へ向かって歩いていく。


そこに恐怖からの警戒もないし、足を止めるような躊躇いすら何一つとして見当たらない。

……そのあまりにも自然に染み付いた二人の距離感が、逆に俺の胸のざわつきをどこまでも大きくさせた。