君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~




───月光を背に受けてそこにぽつんと立っていたのは、頭から足元まで全身を漆黒で統一した一人の男だった。




……その小柄な体格から察するに、年齢は、せいぜい中学生くらいだろうか。


だが、その黒い前髪の奥にある瞳だけは、その幼い年齢にはおよそ不釣り合いなほど、妙に冷徹に完成されていた。



すべての感情を綺麗に削ぎ落としてしまったかのようにどこまでも無機質で、不気味なほどに静まり返っていて。



………まるで、“人を壊すこと”に慣れている目だった。






「翔(かける)………」

「…………」


すぐ後ろで、由良が震える唇からその名前をそっと零し落とした。


それは、まるで“絶対に人に見られてはいけない決定的な現場を見られてしまった”という、隠しきれない強い焦燥感を孕んだ響きで。

なのに同時に、──あぁ、見られたのが他でもないそいつでよかった、とでも言うような、すべてを諦めて身を委ねたような深い安堵が混ざり合っていた。


自分のどんなに醜い姿も、どんな秘密も、そいつにだけなら見られても構わないと言わんばかりの、あまりにも無防備なその声。



その一瞬の声色の響きだけで、俺の胸の奥底に、ざらりとした冷たく不快な違和感が走る。




“カケル”と呼ばれた漆黒の少年は、その言葉に対しても何も言わないまま、ただ冷淡に顎をしゃくってみせる。