親に見捨てられた俺を、あの女が命懸けで庇ったって、俺という存在を拾い上げてくれたから。
……俺みたいなろくでなしなんて、いっそのことあのまま放っておけばよかったのに。
桃華に拾われて、何とか生かされたこの借り物の命を、俺はただ“月華”というチームを大きくするためだけにすべて使い果たしてきた。
受けた恩を返すために、あの女が俺に向ける期待に完璧に応えるために。
そうやって自分を騙しながら、“本当の俺”の心なんてとっくの昔に押し殺して生きてきたはずだった。
──けど、今は違う。
気づいてしまったんだ。
今の俺には、この拳を限界まで振るうための理由がもうひとつあるということに。
俺はずっと、何があっても桃華のことを最優先にして生きてきた。
桃華が望むような、強くて完璧な“総長”であり続けようとしてきた。
だけど、由良……お前と出会ってしまった、その日その瞬間から。
……俺が必死に保ってきたそんな安っぽい価値観なんて、お前によって全部めちゃくちゃに狂わされたんだ。
背負っている立場とか、罪悪感とか、この感情が間違っているとか。
今の俺にとっては、そんな冷めた理屈なんてどうでもよくなるくらいに。
こいつをただ見つめているだけで、俺の胸の奥底は、今にも引き裂かれて壊れてしまいそうになる。
……由良の、こんなにも切なくて重い過去の話を聞いてしまった後なら、なおさらだ。



