あの時屋上で初めて出会った時に感じた、言葉にし難い妙な違和感。
確かに今ここで息をして生きているはずなのに、どこか生き急いでいるような、生気のないガラス玉のような冷たい目。
どれだけ楽しそうに笑っていても、その笑顔の奥にいつも消えない薄暗い影が落ちていて、どこか胡散臭く思えていた理由。
───その全ての答えが、これだったのか。
俺は胸の奥に溜まった冷たい空気を、ゆっくりと、震える吐息と共に吐き出した。
胸の奥が、さっきまでとはまた別の重さで沈んでいく。
……あぁ、だからお前は、さっきあんなツラそうな顔をして。
俺の特攻服の胸元を必死になって掴みながら、あんなにも悲痛な声で「離れないで」なんて言ったのか。
あの時の由良は、俺を見ていたんじゃない。
ただ………。
あの日ここで、目の前から永遠に消え去っていった“誰か”の残像を………必死に重ねて縋っていただけだった。
そう気づいた瞬間、俺の中に生まれたばかりの淡い熱が、全く違う歪な形へとその姿を変えていく。
それはさっきまで感じていた甘酸っぱさなんかじゃないし、ましてや純粋な恋なんて綺麗なものでもない。
もっと鈍くて、重くて、どうしようもないほどに胸を痛めつける、やりきれない感情。
波が寄せては返すたびに、言葉にすることすらできない重苦しい感情だけが、深い海の底へと静かに沈んでいった────……。



