友達ゼロのわたしにそもそも噂を広める相手などいやしない。
それにそもそもあの生徒会長は、理事長である父親の権力に物を言わせて好き勝手やってるって話だったしな。
教師に告げ口したところで揉み消されるのだろう。
だからわたしは今日もいつも通り、気配を消しながら教室に入り、授業を受け、誰の目にも留まることなく一日を終えるのだ。
──学校の敷地内に一歩踏み入れるまでは、そう思っていた。
「おう、やっと来たかミチル」
校門のそばでその声が聞こえた瞬間、わたしの考えは甘かったのだとようやく悟った。
暑さで吹き出した汗をぬぐう手をぴたりと止める。
同時に流れ出す違う種類の汗。
ゆっくりと、声のした方向に視線だけ向ける。
「待ってたぞ」
そこに立っていたのは、昨日生徒会室で見たときとは異なり第一ボタンまでしっかりしめ髪も綺麗に整えられた、きちんと模範的な装いの生徒会長。



