勢いよく部屋へ入ってきたその女性は、綺麗に手入れされたブロンドの髪を靡かせながらサングラスを外して私に問いかけた。
高級そうなコートを脱いで、手慣れた様子でソファに座った彼女。細身の長身で、まるでモデルのような容姿に、自分とは正反対の人だと思った。
「私は、冨羽さんに少しの間お部屋を借りている者……です」
「それだけ?」
「え?」
「本当にそれだけなの?」
「それだけ、とはいったい……」
「だから!翼と体の関係はあるのかって聞いてんでしょ!?」
耳を擘くような高い声が部屋中に響いた。
興奮気味に立ち上がって声を張った彼女とは正反対に、私は自分でも驚くほど冷静だった。
冨羽さんと体の関係なんて、あるわけないじゃない。
毎日どれだけ一緒にいても、冨羽さんは私に指一本触れては来なかった。
それがどういう意味なのか、分からないわけじゃない。
だから余計に苦しかった。
私には魅力がないのだと思わざるを得なかった。
彼はそんな過ちを犯すような人じゃないと思う反面、心のどこかでそんな間違いが起きればいいのに、だなんて浅ましい気持ちを持ってしまった自分にも嫌気がさした。
「ありません」
「……」
「そんなことは、一度もありませんでした」
淡々とそう告げると、目の前の彼女は「ふーん」と言って再びソファに腰掛けた。
「ま、そうよね。なんたって翼には婚約者がいるらしいし」
「──え?」



