冨羽さんのその驚いた様子に苦笑いしたのは私だけではなく、彼専属の外商である田岡さんも同様にぎこちなく微笑んでいた。

 私に差し出してくれた田岡さんの名刺には、支店長と書かれてあった。




 そんな上のクラスの人が冨羽さんの担当外商だなんて、いったい彼はどんな人なんだろうか。

 バーのオーナーをしているとは聞いたけれど、だからと言って冨羽さんが突発で来店してきたにも関わらず、わざわざ挨拶に来て別室を用意してくれるほどのお得意さんになれるものなのだろうか。


 父にも月に一度のペースでデパートの外商の方が家に来て様々なサンプルやカタログを持って来てくれてはいたけれど、ここまでのお持てなしをされたことはないはず。



「もちろん当店でも日用品を取り揃えることは可能でございますよ?一度こちらでカタログをお持ちいたしますので、いろいろと吟味なさってくださいませ。香りや衣服の担当もすぐに呼びますので、このままこちらでお待ちください」


 田岡さんはそう言って、一旦裏へ引き下がってしまった。

 そして十分後、たくさんの人たちが入れ替わり立ち替わりでこの部屋へやって来ては、たくさんのカタログを抱えながら商品の説明を施してくれた。

 結局日用品を購入するのに二時間もかかってしまった私は、ヘトヘトになりながら冨羽さんの後ろをついていくようにデパートを出ていった。

 購入した品物はすべて今日中に家に届けてくれるそうで、私たちは手ぶらでアイス屋へと向かっている。



 「いやぁ、無事買えてよかったね千代ちゃん」

 「本当にありがとうございました。でも私、何もここまでしていただかなくても……」

 「俺はね、待ってるんだよ?」