どれだけ断っても食い下がってくる冨羽さんに負ける形で、私はそっと「ありがとうございます」と言って頭を下げてお礼を述べた。
そう言うと、彼はまたニッコリと人懐っこい笑みを浮かべながら、「じゃあ買い物が一通り終わったらアイスも一緒に食べようか!」とさらに付け加えて、さっそく私の腕を掴んで玄関へ引っ張っていく。
二人でエレベーターで一階のエントランスまで行くと、コンシェルジュがすでに彼の車を下まで回してくれていた。冨羽さんは私をエスコートするように助手席のドアを開けて「どうぞ?」と言って車内へ誘う。
まったく車に興味がない私でも分かるくらいの高級車に、思わず背筋がまっすぐに伸びてしまう。
「じゃあ出発するね」
「あ、ありがとうございます。お願いします」
いったいどこに向かっているのか、はたまた日用品とは何を買うのか全く分からなかった私は、車で十分ほど走ったところにある高級デパートの入り口で思わず固まってしまった。
店内へ入るとすぐに、裏から走ってやって来たであろう店員さんとはまた違った男性が大急ぎで冨羽さんに挨拶をして、今日の予定を一生懸命にヒアリングしている。
それどころか私はてっきり店内に入っている店舗を見て回るものとばかり思っていたけれど、冨羽さんと一緒に連れてこられた場所は、VIPルームと思わしき店内の奥の広いひと部屋だった。
「冨羽様、本日はお連れの女性の日用品を誂えにいらしてくださった、ということでお間違いございませんか?」
「はい。俺は女性ものの好みとかよく分からないから、彼女が欲しいと言ったものをオーダーします」
「なっ!ちょっと、と、冨羽さん?」
「そのあとアイス食べに行こうね」
「ち、違くて……。その、日用品っていうのは、ドラッグストアとかで買うのが普通かと……」
「え、そうなの!?」



