五月の早朝はちょっと肌寒い。
寝みぃ~とあくびしながら河川敷の先に聳える寿老人ホームに向かって自転車を漕ぐ。
少し先の方に、ママチャリをじゃかじゃか走らせる泉を発見した。
今のところ1年生の介助実習はA組から順番に2クラスずつ合同で行っているので、朝は必ず河川敷で泉と会う。
朝が苦手というわりに、俺より清々しい表情でママチャリを漕いでいる泉。
友達と一緒じゃない時の泉はいつもと雰囲気が違う。
それをしばし眺めた後で、ペダルにぐっと力をこめて、一気に泉との距離を詰めていく。
「うっす、泉」
呼びかけた瞬間、いつもの泉になっている。こいつのこれは一体どういうことなんだろう。
ふと、泉のくせ毛に緑色の何かが付いているのが見えた。
「あ、髪に」
手を伸ばした瞬間。
ズザザザー、シュッ!!
「へ?」
ママチャリにあるまじき俊敏な動きで、泉の自転車が俺から飛び跳ねるように距離を取る。
「え?」
そんな離れ業を見せた後「何か?」的な雰囲気で、平然とする泉。
「……今のBMX的な技、どうやったん?」
平常心。
「いや……私にもわからん」
平常心。
「お前、なんつー運動神経してるわけ? つか葉っぱ刺さってんぞ」
何でもない風を装って、笑い飛ばす。
「え?」と、泉が片手をくせ毛に乗せて。
「あ、ホントだ……ウケる」
ウケると言いつつ、ちょっとムッとしながら葉っぱをどかしている。
平常心。
「つかさ、朝からじいさんばあさんの文句聞くのかって思ったら、萎えんだけど」
「それ、全国の高校生が思ってますなー」
心臓に鈍い痛みを覚えながら、泉といつも通りのどうでもいい話を喋り続ける。
頭の中で電話越しの直太の声が勝ち誇ったように言い放っていた。
『女子ってさー、脈ありじゃない男子には、ぜってぇ髪触らせないんだってさー』
つまり俺は脈なし?
寝みぃ~とあくびしながら河川敷の先に聳える寿老人ホームに向かって自転車を漕ぐ。
少し先の方に、ママチャリをじゃかじゃか走らせる泉を発見した。
今のところ1年生の介助実習はA組から順番に2クラスずつ合同で行っているので、朝は必ず河川敷で泉と会う。
朝が苦手というわりに、俺より清々しい表情でママチャリを漕いでいる泉。
友達と一緒じゃない時の泉はいつもと雰囲気が違う。
それをしばし眺めた後で、ペダルにぐっと力をこめて、一気に泉との距離を詰めていく。
「うっす、泉」
呼びかけた瞬間、いつもの泉になっている。こいつのこれは一体どういうことなんだろう。
ふと、泉のくせ毛に緑色の何かが付いているのが見えた。
「あ、髪に」
手を伸ばした瞬間。
ズザザザー、シュッ!!
「へ?」
ママチャリにあるまじき俊敏な動きで、泉の自転車が俺から飛び跳ねるように距離を取る。
「え?」
そんな離れ業を見せた後「何か?」的な雰囲気で、平然とする泉。
「……今のBMX的な技、どうやったん?」
平常心。
「いや……私にもわからん」
平常心。
「お前、なんつー運動神経してるわけ? つか葉っぱ刺さってんぞ」
何でもない風を装って、笑い飛ばす。
「え?」と、泉が片手をくせ毛に乗せて。
「あ、ホントだ……ウケる」
ウケると言いつつ、ちょっとムッとしながら葉っぱをどかしている。
平常心。
「つかさ、朝からじいさんばあさんの文句聞くのかって思ったら、萎えんだけど」
「それ、全国の高校生が思ってますなー」
心臓に鈍い痛みを覚えながら、泉といつも通りのどうでもいい話を喋り続ける。
頭の中で電話越しの直太の声が勝ち誇ったように言い放っていた。
『女子ってさー、脈ありじゃない男子には、ぜってぇ髪触らせないんだってさー』
つまり俺は脈なし?



