(どういうことだ? 一体、なにがあった?)

執務室に戻ると、高良はデスクに両肘をついてうつむく。
春日との話で、心は千々に乱れていた。

春日ブライダルがソルシエールに提携を申し入れる、そのことだけでも驚いたが、もっとショックを受けたのは――。

(まさか白石さんの方から、春日副社長に連絡したなんて……)

そんなことはまるで知らなかった。

(なんの為に? 二人で一体、どんな話を?)

今すぐ美蘭に電話をかけて尋ねたい。
だが今の自分では、冷静に話をすることは出来そうになかった。

(落ち着け。こういうことは電話ではなく、直接顔を見て話した方がいい。次に彼女に会った時に、それとなく聞いてみよう。恐らくそんなに大したことではないはずだ)

そうに違いない。
いや、そうであってほしい。

高良はなんとか気持ちを落ち着かせると、ブライダルサロンに内線電話をかける。
次にソルシエールのドレスが持ち込まれる挙式がいつかを聞くと、10日後だという返事が返ってきた。

(そんなに先まで待てない)

今度は『フルール葉山』のブライダルサロンに電話をかける。
次の日曜日の挙式でソルシエールのドレスが使われると聞き、高良は心に決めた。

(その挙式には、白石さんも立ち会うはずだ。そのあとなんとか捕まえて話をしよう)

春日ブライダルと提携するつもりなのか?
いや、もっと聞きたいのは、なぜ春日副社長に話がしたいと言ったのか。
そして二人でどんな話をしたのか、だ。

(恐らく春日副社長は、白石さんを狙っている)

根拠はないが、なぜだかそう確信した。
ご報告と称しながら、まるで宣戦布告のようだった今夜の会食。
あんなにも男の魅力に溢れた春日が、美蘭に告白したら?

ぼやぼやしてはいられない。
ソルシエールのドレスも、そして美蘭も、春日に渡してなるものか。

高良はそう気を引き締めた。