「少し待ってて、送って行くから」
パーティーがお開きになると、ゲストの挨拶を受けながら高良は美蘭にそう伝えた。
本当は帰らせたくない。
なんとかしてこのまま部屋に連れて行きたい。
強引過ぎて嫌われるだろうか。
それでも自分はまだ美蘭と一緒にいたい。
このまま告白して、自分のものにしてしまいたい。
そんな考えに心を乱されながら、高良はゲストと握手を交わしてにこやかに見送っていた。
すると支配人がやって来て、小さく耳打ちする。
「各ホテルでトラブルが相次ぎ、副社長の携帯に連絡が来ているようです。応答がないのでここのフロントに電話がありました」
「ああ、分かった」
パーティーの間はサイレントモードにしていたスマートフォンを内ポケットから取り出すと、50件もの着信があって驚く。
その間にもまた着信が来た。
「もしもし、私だ」
『あ、副社長! 良かった、ようやく繋がった』
電話口で『プラージュ横浜』の支配人がホッとしたように言う。
「なにかありましたか?」
『はい。客室、レストラン共にオーバーブッキングが発生しています。クリスマスイブなので、他のところをご紹介しようにもどこも予約がいっぱいで。返金とご迷惑料をお渡ししましたが、納得いかないと』
「分かりました。それでは別の日にスイートルームにご招待するとお伝えして予約を取ってください。ご希望ならフレンチレストランも」
『よろしいのですか? はい、早速ご提案してみます』
「よろしくお願いします」
電話を切ると、すぐにまた鳴り始めた。
今度は沖縄の『パラディ石垣島』からだった。
出てみると、レストランの仕入れミスでご予約のお客様にコース料理をご提供できないとのこと。
こちらも同じように、別の日にスイートルームとレストランのご招待を提案してみるように伝える。
「すまない、電話が立て込んでしまって」
「いいえ」
隣で待たせてしまっている美蘭に謝ると、にっこりと微笑んでくれた。
その笑顔に思わず頬を緩めたところで、また電話がかかってくる。
「あの、新海さん。お忙しいでしょうから、私はここで失礼いたします。今夜はありがとうございました」
通話ボタンをスワイプした途端に美蘭にそう言われ、高良は慌てて振り返った。
「いや、ちょっと待って」
だが美蘭は既に遠ざかり、スマートフォンからは『もしもし?』と声がする。
高良は仕方なく電話に戻った。
パーティーがお開きになると、ゲストの挨拶を受けながら高良は美蘭にそう伝えた。
本当は帰らせたくない。
なんとかしてこのまま部屋に連れて行きたい。
強引過ぎて嫌われるだろうか。
それでも自分はまだ美蘭と一緒にいたい。
このまま告白して、自分のものにしてしまいたい。
そんな考えに心を乱されながら、高良はゲストと握手を交わしてにこやかに見送っていた。
すると支配人がやって来て、小さく耳打ちする。
「各ホテルでトラブルが相次ぎ、副社長の携帯に連絡が来ているようです。応答がないのでここのフロントに電話がありました」
「ああ、分かった」
パーティーの間はサイレントモードにしていたスマートフォンを内ポケットから取り出すと、50件もの着信があって驚く。
その間にもまた着信が来た。
「もしもし、私だ」
『あ、副社長! 良かった、ようやく繋がった』
電話口で『プラージュ横浜』の支配人がホッとしたように言う。
「なにかありましたか?」
『はい。客室、レストラン共にオーバーブッキングが発生しています。クリスマスイブなので、他のところをご紹介しようにもどこも予約がいっぱいで。返金とご迷惑料をお渡ししましたが、納得いかないと』
「分かりました。それでは別の日にスイートルームにご招待するとお伝えして予約を取ってください。ご希望ならフレンチレストランも」
『よろしいのですか? はい、早速ご提案してみます』
「よろしくお願いします」
電話を切ると、すぐにまた鳴り始めた。
今度は沖縄の『パラディ石垣島』からだった。
出てみると、レストランの仕入れミスでご予約のお客様にコース料理をご提供できないとのこと。
こちらも同じように、別の日にスイートルームとレストランのご招待を提案してみるように伝える。
「すまない、電話が立て込んでしまって」
「いいえ」
隣で待たせてしまっている美蘭に謝ると、にっこりと微笑んでくれた。
その笑顔に思わず頬を緩めたところで、また電話がかかってくる。
「あの、新海さん。お忙しいでしょうから、私はここで失礼いたします。今夜はありがとうございました」
通話ボタンをスワイプした途端に美蘭にそう言われ、高良は慌てて振り返った。
「いや、ちょっと待って」
だが美蘭は既に遠ざかり、スマートフォンからは『もしもし?』と声がする。
高良は仕方なく電話に戻った。



