(ほんとにこのドレスを着るの?)
どこかふわふわした気持ちのまま、美蘭はパーティードレスを作っていく。
そのうちに、子どもの頃に見た思い出の光景が脳裏に蘇ってきた。
まるでシンデレラの絵本そのままに、大階段に佇むウェディングドレスの花嫁。
架空の世界だと思っていたおとぎの国が、目の前に広がっていた感動。
憧れのプリンセスに会えた感激。
(女の子はみんなお姫様になるんだ。夢はいつか叶うんだ)
心の中であの日の小さな自分がキラキラと目を輝かせる。
(叶えてあげたい、あの頃の自分の夢を)
いつしかそんな気持ちになり、美蘭は10歳の自分の為にドレスを仕上げていった。
そしてやってきた12月24日。
「じゃあね、美蘭。素敵なイブを」
「うん、ありがとう。未散ちゃんもデート楽しんでね」
未散は美蘭の髪型を綺麗にアップでまとめ、華やかにメイクも施してから、自分もドレスアップしてアトリエを出て行った。
時計を見ると18時を回ったところ。
(そろそろ着替えようかな)
美蘭はトルソーに着せていたドレスを外し、ゆっくりと腕を通す。
艷やかなシルクのドレスは、ピタリと美蘭の身体に馴染んだ。
キュッと絞ったウエストから流れるようなドレープは、歩くだけでサラリと軽やかに揺れる。
肩から手首まではオーガンジーでふんわりと覆った。
ネックレスとピアスはパーティー用のゴージャスにきらめくものを、足元も普段より高い7cmヒールにした。
肩にパールホワイトのショールを掛け、クラッチバッグを持つと部屋を出る。
呼んでおいたタクシーに乗ってホテルに着くと、時刻はまだ18時50分だった。
(早く着いちゃったな)
そう思いつつ、美蘭は大階段まで進む。
そっと手すりに右手を添えて見上げると、本当に舞踏会に来たような気分になった。
(さめない夢が叶う場所……)
10歳の頃の自分の言葉を噛みしめる。
(私、あの時からずっと夢見心地でここまで来たのかな)
そんなことを考えていると、ふいに後ろから「白石さん」と声をかけられた。
「はい」
振り返った美蘭は驚く。
サイドの髪を綺麗に整え、フォーマルなスリーピースのスーツに身を包んだ高良が、優しい微笑みを浮かべて立っていた。
「こんばんは」
「新海さん、こんばんは」
「お待たせしました」
「あ、いえ。私も今来たところです」
「では参りましょうか。バンケットホールは2階です」
「はい」
高良はスッと左手を美蘭に差し出す。
ドキドキしながら右手を伸ばすと、優しくきゅっと握られ、そのまま大階段へといざなわれた。
夢の時間の始まりーー
美蘭の心の中にそんな言葉が浮かんだ。
どこかふわふわした気持ちのまま、美蘭はパーティードレスを作っていく。
そのうちに、子どもの頃に見た思い出の光景が脳裏に蘇ってきた。
まるでシンデレラの絵本そのままに、大階段に佇むウェディングドレスの花嫁。
架空の世界だと思っていたおとぎの国が、目の前に広がっていた感動。
憧れのプリンセスに会えた感激。
(女の子はみんなお姫様になるんだ。夢はいつか叶うんだ)
心の中であの日の小さな自分がキラキラと目を輝かせる。
(叶えてあげたい、あの頃の自分の夢を)
いつしかそんな気持ちになり、美蘭は10歳の自分の為にドレスを仕上げていった。
そしてやってきた12月24日。
「じゃあね、美蘭。素敵なイブを」
「うん、ありがとう。未散ちゃんもデート楽しんでね」
未散は美蘭の髪型を綺麗にアップでまとめ、華やかにメイクも施してから、自分もドレスアップしてアトリエを出て行った。
時計を見ると18時を回ったところ。
(そろそろ着替えようかな)
美蘭はトルソーに着せていたドレスを外し、ゆっくりと腕を通す。
艷やかなシルクのドレスは、ピタリと美蘭の身体に馴染んだ。
キュッと絞ったウエストから流れるようなドレープは、歩くだけでサラリと軽やかに揺れる。
肩から手首まではオーガンジーでふんわりと覆った。
ネックレスとピアスはパーティー用のゴージャスにきらめくものを、足元も普段より高い7cmヒールにした。
肩にパールホワイトのショールを掛け、クラッチバッグを持つと部屋を出る。
呼んでおいたタクシーに乗ってホテルに着くと、時刻はまだ18時50分だった。
(早く着いちゃったな)
そう思いつつ、美蘭は大階段まで進む。
そっと手すりに右手を添えて見上げると、本当に舞踏会に来たような気分になった。
(さめない夢が叶う場所……)
10歳の頃の自分の言葉を噛みしめる。
(私、あの時からずっと夢見心地でここまで来たのかな)
そんなことを考えていると、ふいに後ろから「白石さん」と声をかけられた。
「はい」
振り返った美蘭は驚く。
サイドの髪を綺麗に整え、フォーマルなスリーピースのスーツに身を包んだ高良が、優しい微笑みを浮かべて立っていた。
「こんばんは」
「新海さん、こんばんは」
「お待たせしました」
「あ、いえ。私も今来たところです」
「では参りましょうか。バンケットホールは2階です」
「はい」
高良はスッと左手を美蘭に差し出す。
ドキドキしながら右手を伸ばすと、優しくきゅっと握られ、そのまま大階段へといざなわれた。
夢の時間の始まりーー
美蘭の心の中にそんな言葉が浮かんだ。



