「お会いしたことがあるのよ。」
おばあちゃんが美緒ちゃんに言う。まずい。
「ね、凛ちゃん!」

「いや?会ったことないと思うな。」

「あらやだ凛ちゃんとぼけちゃって〜。ほら、あのポスターをくれて。」と、おばあちゃんが指差すのは神棚の上のポスター。

「あ!本当だ!あんなとこにポスター貼ってあったの気づかなかった!おばあちゃんファンなんだ!」
美緒ちゃんが目を輝かせる。

「そうそう。いい子たちだったわぁ。」
おばあちゃんがお吸い物に口をつける。

美緒ちゃんがおばあちゃんを見る。
「……ポスターをくれた?いい子たちだった……?」まずい。


「そうそう、持ってった炊き込みご飯美味しそうに食べてくれてね。ね、凛ちゃん。」
蕎麦を咽せる。

「お母さん誰かと勘違いしてるんじゃないの?」とお母さんがおばあちゃんに言う。

「勘違い?だって、あのポスター……あれぇ?私ボケたかしら。」
「うん。」

お母さんは涼しい顔でお茶を飲んでいる。
「案外ボケないもんねぇ。」
と私にしか聞こえないくらいの声で呟く。
「まあなんにしたっていいことだ。」